インデックス投資家の中で熱烈に支持されている、ジェレミー・シーゲル氏の「株式投資の未来」を読みました。
市場指数(S&P500)に対して、どういった株式がどれくらい高パフォーマンスを上げてきたか、または、どういった株式が低パフォーマンスだったかが詳細に分析されています。
また、個人投資家でも実践できる「市場平均を上回るためのポートフォリオの作り方」も紹介されていますので、非常に参考になります。
まだ「株式投資の未来」を読んでいない方、または、読んだけれど再度要点を確認したい方のために、7つほど重要だと思われる部分をピックアップしてまとめてみました。
目次
配当が高い運用成績を実現する
配当は大いに物を言う。長期的に高い運用成績を達成した銘柄は、たいていの場合、配当を再投資したことがその最大の理由となっている。
高配当銘柄は「成長機会」に乏しいと説く向きもあるが、事実はその逆だ。
なぜ配当を再投資すると莫大に儲かるのか?その仕組みは簡単です。
「割安で株価上昇率の低い高配当株」と「割高で株価上昇率が高い低配当株」を、毎年一定額買い続けていく場合(配当もプラスして)を考えてみればよくわかります。
割安で株価上昇率の低い高配当株を毎年買い続けていく場合、配当金がたくさんもらえる上に株価が上がりにくいのだから、たくさん株を買い増していけることがわかると思います。
一方、割高で株価上昇率が高い低配当株の場合、配当金が少ない上に株価上昇率が高いので、あまり株を買い増せないことがわかると思います。
つまり、配当金をプラスして長期的に一定金額積み立て購入していく場合、割安で株価上昇率の低い高配当株を買うほうが、圧倒的にたくさん株式を保有できるわけです。
株式保有数が多いと、配当金が多くなります。また、株を売ったときの売買益も増えます。
「割高で株価上昇率が高い低配当株」の場合、株価は高くなりますが、いくら株価が高くなっても、その株の保有数が少なれれば配当金は少ないです。株を売ったときの売買益も少ないです。
「割安で株価上昇率の低い高配当株」を配当再投資で買い増していったほうが、より稼げるわけです。
「PER」「配当利回り」「増益率」で黄金面柄を見抜く
運用成績が際立って高い企業はたいてい、
①PERが市場平均をわずかに上回る程度で、
②配当利回りが市場平均並みで、
ただし、
③長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている。
運用成績上位20銘柄のPERは最高でも27倍だ。これが、黄金銘柄に共通する特徴だ。
配当再投資で莫大に儲けられる株式の特徴といってもいいかもしれません。
配当を出していて、じわじわ成長する株は、配当再投資でたくさん株式を買い増せるので将来的にたくさん配当金が貰えます。また、株価も上がっているのでキャピタルゲインも狙えます。
ダブルで儲けられるわけです。
単純に高配当株なら何でも儲かるってわけではないということです。
配当利回りが良くても、一向に株価が上がらない株や、むしろ下がっていく株もあります。
長期的な勝ち組は「ヘルスケア」「生活必需品」「エネルギー」
長期的な勝ち組として3つのセクター(業界)が浮上した。ヘルスケア、生活必需品、エネルギーだ。
ヘルスケアと生活必需品セクターだけで、S&P500生き残ろグループの運用成績上位20社の90%を占めている。
普通、ネットや金融関係の会社の株を買うほうが、ヘルスケアや生活必需品の会社の株を買うより儲かると思いませんか?
ところが、実際はヘルスケアや生活必需品の会社のほうがリターンが大きいんです。
生活必需品の会社の株なんて普通の人は好んで買いませんので、割安で見過ごされがちです。
でも、生活必需品っていつでもどこでも必要ですから、生活必需品関係の会社はしっかり利益を出して安定的に配当を出しています。ヘルスケアも然り、エネルギーも然り。
配当を出していて、じわじわ成長してるんです。
なので、配当再投資で長期投資していくとリターンが高くなるわけです。
配当は下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
相場が下落する局面で、配当はとくに次の2つの役割で投資家に貢献する。
まず再投資を通じて保有株を余分に積み増せるので、これがポートフォリオの価値下落を受け止めるクッションとなる。(略)
買い増した株式は、相場がいったん回復すれば、下落に対するクッションどころでない役割を果たす。保有株数が増すほど、将来のリターンが加速するからだ。
つまり、配当再投資は、下落局面でプロテクターとなり、株価がいったん上昇に転じれば、「リターンの加速装置(アクセル)」となる。
配当を出さない株式の場合、株価が下がるともろに投資資金が減ります。
一方、配当を出す株式の場合、株価が下がって投資資金が減るのは同じですが、配当金が貰えるので、その分プラスです。
また、株価が下がった時に株を買いましておけば、将来的に株価がもとに戻った時にお得です。配当金が増える上に、キャピタルゲインも増えます。
配当がない株の場合、株価が下がった時に買い増したとしても、将来的に株価がもとに戻った時に得られるものはキャピタルゲインだけです。
株式の実質リターンは6.5%〜7%
期間を長期的のとれば、株式の平均リターンは、どの時期にも一貫して年率6.5%〜7%のレンジを維持している。
つまり、株式市場では過去200年間(1802〜2003年)、購買力ベースで見て、投資家の財産が平均して10年で倍のペースで増え続けたことになる。(略)
保有期間が短いとき、株式はあきらかに、債権より高いリスクを伴う。だが、保有期間が長くなり、15年から20年になると、株式のリスクは債権を下回るようになる。
さらに長く保有して30年を超えると、株式のリスクは、長期国債、短期国債の4分の3以下に低下する。
保有期間が伸びるにつれ、株式の平均リターンのリスクは、債権のほぼ倍のペースで低下していく。
株式に長期投資すれば、インフレ調整後で6.5%〜7%のリターンだそうです。(米国市場の場合)
私は5%前後だと思っていたんですが、勘違いだったようです。
長期投資すれば、株式のリスクはさほど高くないというのは知っていましたが、まさか債権の4分の3以下までリスクが下がるとは知りませんでした…。債権と同等ぐらいかと思ってました。
30歳から定年間近の60歳まで投資すれば30年です。30歳前後の人で米国中心に長期投資する人は、資産ポートフォリオに債権を組み入れなくても良いかもしれませんね。
GDP成長率と株式のリターンは逆相関
新興成長国25ヶ国を対象として、GDP成長率と株式リターンの関係を示した。
ブラジル、メキシコ、アルゼンチンなど、株価が適正水準にある国は、経済成長率で25ヶ国中再開に近いが、リターンはほぼ最上位だ。
中国(成長率が首位、リターンが再開)とブラジル(成長率が下から2番目、リターンが上から3番目)を覗いても、対象国のGDP成長率と株式リターンが逆相関の関係にあることに変わりはない。
GDP成長率が高いということは、どんどん国が豊かになっていると言いかえられます。
そういう国の株を買えば儲かると考えるのは当然です。国が活気づいてるんですから。
でも、実際はそんなに儲かりません。むしろ、逆。GDP成長率が高い国ほど、リターンは低くなる傾向にあります。
普通は経済が成長して、所得が増えて、購買力が増えれば、株価が上昇すると思うはずです。でも、そういう成長に対する期待はバブルになり、結果的に株価の過大評価になってしまうようです。
DVI指針でインデックス運用を越える
長期的に財産を積み上げたいなら、インデックス運用がいちばんだと思えた。だがいまでは、もっと上を目指せる戦略があると確信している。(略)
インデックス・ポートフォリオに、本書で紹介した保管戦略を組み合わせれば、さらに高いリターンを狙うことが出来る。(略)
ポートフォリオ戦略に応用できる部分を選び出し、3つの指針にまとめてみた。頭文字をとって「D-V-I」指針と呼んでいる。(略)
配当(Dividend)
個別銘柄の選択にあたっては、持続可能なペースでキャッシュフローを生成し、それを配当として株主に還元する銘柄を選ぶ。国際(International)
世界のトレンドを認識する。このままいけば、世界経済の均衡が崩れ、中心は、米国、欧州、日本から、中国、インドをはじめ途上国世界へとシフトする。バリュエーション(Valuation)
成長見通しに対してバリュエーションが適正な株を買い続ける。IPOや人気銘柄は避ける。個別銘柄であれ業界であれ、市場の大勢が「絶対買い」とみているうちは、買わない。
国際分散投資(ワールドインデックスファンド)に加えて、DVI指針にのっとった株をポートフォリオに組み入れることで、単純にインデックスファンドを購入するよりも高い運用成績を目指せるとシーゲル氏はおっしゃっています。
「お金がほしいけど、株価チャートを一日中ながめながらトレードするなんて無理。
自分に合いそうな投資方法はインデックス投資。
でも、インデックス投資のリターンって、そんなに高くないんだよな…。はやくお金持ちになりたいのに。。。」
っと、思っていた私にとって、このシーゲル氏の言葉はまさに福音でした。
具体的には…
- ワールドインデックスファンド50%
- 米国30%
- 非米国20%
- リターン補完戦略50%
- 高配当戦略10〜15%
- 配当利回り上位20%
- ダウ10種、S&P10種、ダウ・コア10種、S&Pコア10種
- REIT
- グローバル戦略10〜15%
- S&Pグローバル100
- ダウ・ジョーンズ・グローバル・タイタンズ
- 多国籍企業への分散投資
- セクター戦略10〜15%
- 石油および天然資源
- 医薬品
- 有名ブランドの生活必需品
- バリュー戦略10〜15%
- 低PER
- 生き残り上位(成長率が期待を上回る株)
- バークシャー・ハサウェイ
- 高配当戦略10〜15%
合計100%でポートフォリオを作ることになります。
実際にこのシーゲル氏のポートフォリオを個別株で実現しようとすると、かなり面倒です。
米国の株を隅々まで調べるのは大変ですし、買い替え、買い増しの手間もかかります。
しかし、リターン補完戦略のそれぞれの部分をETFで代用すれば、かなりシンプルになります。管理も簡単です。
実際、シーゲル氏のポートフォリオをETFで代用して実践されている投資ブロガーの方はいらっしゃいます。私も追随していくつもりです。
どの部分に何を買えばシーゲル氏の考えにのっとって、なおかつシンプルに運用できるのか、今後研究していきたいと思います。
まとめ
- 配当が高い運用成績を実現する
- 「PER」「配当利回り」「増益率」で黄金面柄を見抜く
- 長期的な勝ち組は「ヘルスケア」「生活必需品」「エネルギー」
- 配当は下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
- 株式の実質リターンは6.5%〜7%
- GDP成長率と株式のリターンは逆相関
- DVI指針でインデックス運用を越える
インデックスファンドに投資するなら必読の書、「ウォール街のランダム・ウォーカー」については、以下の記事で紹介しています。
参考:【書評】ウォール街のランダム・ウォーカーから学ぶ、投資で大切なこと10選
その他、投資信託やETFに投資する前に読んでおいたほうが良い本は、以下の記事で紹介しています。
よろしければ参考にしてみてください。
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